『猫楠―南方熊楠の生涯』 水木しげる | bohemian rhapsody in blue

『猫楠―南方熊楠の生涯』 水木しげる

水木しげるが南方熊楠の生涯を描いた
『猫楠―南方熊楠の生涯』 を読み終えた。
熊楠と水木しげるが良い感じで交わってた。
熊楠の怪人ッぷりと
熊楠を通じての『もう一つの世界』をユーモア&シモネタw
たっぷりに描いてた。熊楠が長男のクマヤが生まれた時から
面白がって毎日観察し、
小学校に入るまで一日も欠かさずに記したって話は思わず笑顔になっちまった。
いつも裸でゲロを吐いてもそのままにしてるし(粘菌を観察するため)
陰毛の研究はするし、チンポに蟻用のえさをぬって
ありに噛ませるオッサンだけど
なんだかかわいいとこあるじゃんって感じだった。赤ちゃんって
不思議、予測できない事の塊だから確かに研究するには
絶好の対象だろうな。その気持ち分からんでもない。
そのクマヤが高校受験のときになぜか分からないが病気になって
頭が狂ってしまって、南方家に悲劇が訪れる所は、泣けてきた。

クマヤは頭が狂って、時たま発作を起こして大暴れするが、大人しい時は
粘菌の絵を書いて熊楠を喜ばしていた。
それが親にはとても嬉しいことだったと思う。
もしかしたら治るんじゃないかとも思っただろう。
熊楠の猫が『そうやって親はバランスをとるんだ』なんていってた。
冷静なヤツだにゃー。
そのクマヤがあるとき大暴れして長年苦心して書いた
粘菌の絵をバリバリ破いた。そのときの熊楠の悲しみは
相当のものだったろうな。二人の思い出だったろうし、
絆を具現化したものだったろう。
可愛がってて『日本一の息子』と言っていた息子が書いた
大好きな粘菌の絵を息子に無残にも破られた。
うう、泣けてきた。(泣)
これは悲しい。
あの熊楠も泣いていた。娘の文枝もはじめて熊楠の涙を見たと言っていた。
若い頃は自由奔放に生きて家族の事もそれほど考えず、
自分の意思を押し通してきたけど老いてから悲劇が訪れた。

まあ、そこら辺の話が今回は印象に残ったけど、若かりし頃の熊楠のバイタリティにも
惹かれた。(江川達也の漫画『日露戦争物語』で東大予備門(現東大)時代の
熊楠が少し書かれてる。やっぱがい(凄い)な男やったね)
18カ国語マスターしてるし、大英図書館に勤めてるし、猫語も話せた。
科学雑誌『ネイチャー』にも論文を載せた。
それにどれだけ貧乏でも(ロンドン時代には服をうっぱらって部屋じゃ
全裸で暮らしてた。)
好きな研究が出来れば良いっていう姿勢に惹かれた。まあ貧乏なんて
気にしてなかっただろうね。そんなこと眼中になかったって言う方が正解か。
とにかく違う世界に生きてたな。ありゃ。
ホント魅力たっぷりに描かれてた。

まーなにはともあれ、『水木氏も実は妖怪だ』に一票。
南方熊楠・(グーグル検索)